本:『時間は存在しない』
『時間は存在しない』を読んだ。
物理学者が書いた本だけど、一般向けで、数式はほぼ出てこない。「ループ量子重力理論」の専門家が時間というものをどのように捉えているか、を説明した本。
とてもエキサイティングで面白かったが、実験的事実なのか作者の予想なのかが明記されていないところがあるのでそこだけは注意。たとえば時空はループし得る("常に未来に向かいながらも時空のもとの点に戻ってくるような構造を作り出すこともあり得る")と書いてあってびっくりしたのだけど、調べた範囲ではどうも「相対性理論に反しない範囲で、そのような構造を許す宇宙を考えることができる」というだけのことらしい?
量子重力理論
著者の専門は「ループ量子重力理論」と呼ばれる分野だ。量子重力理論というのは量子力学と重力の関係を調べる学問である。自然界の基本となる4つの力のうち、3つまでは素粒子の働きで説明ができるのだが、残る重力のみが謎のまま残っているのである。
量子重力理論の他のものとしては「超弦理論」が挙げられる。現在のところどちらの理論も仮説の段階で、裏付けとなる実験結果はまだない(重力は他の3つの力に比べて桁違いに弱いので、実験が困難であるらしい)。
時間が存在しないとは?
例えば鏡は左右を反転するものだと思われがちだけど、正確にはそうではなく(例えば鏡を床に置けば上下が反転する)、人間の感覚として「左右が反転しているように見える」というのが本当であるように、時間も宇宙を構成する基本要素には含まれておらず、人間の感覚として「過去から未来へと至る時間というものがあるように感じられる」だけなのではないか…という話だと理解した。
がしかし、なぜそうなるのかについては残念ながら、ここで説明できるほどには理解できなかった。9章の熱時間という概念がキーになると思うんだけど、どうも本書の造語っぽくて、「熱時間」で検索しても解説がない。英語だとなんていうんだろう。thermal time?